欧州銀行に資本直接注入で合意
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欧州銀行に資本直接注入で合意 (2012年6月)
欧州金融財務危機に直面するユーロ圏17カ国は6月29日、
欧州安定メカニズム(ESM)を活用し、
欧州銀行に各国政府を経由せず直接資本注入を行うことなどで合意した。
ユーロ圏首脳会議で合意された主な内容は以下の通り。
・単一の金融監督メカニズムを創設する。 ・欧州安定メカニズム(ESM)による金融機関への直接資本注入を可能にする。 ・スペインへの支援融資にはESMなどへの優先弁済権を付けない。
スペイン金融危機の拡大を恐れるユーロ諸国
スペインの金融機関(銀行)は
スペイン国債の価格暴落によって危機に陥っている。
国債価格が下がり続けるのを食い止めるために国債を買い増したことで
危機が余計に深刻になった形だ。
そしてスペイン政府は、国債価格下落を招くほど財政が悪化しているわけだから
公的資金投入などで銀行救済を行うことができない。
政府の財政悪化⇒国債価格の下落⇒銀行の国債買い支え⇒銀行危機の発生⇒スペイン不信の拡大
という負の連鎖が拡大し、スペイン政府はすでに対処不能の状態となっている。
ユーロ諸国は今回の合意の中で
「(ユーロ諸国には)負の連鎖を断ち切る責任がある」と指摘し、
7月に立ち上げられるESMが銀行に直接資本注入できるようにした。
これまで検討されていたスペイン政府を経由した資本注入では
一時的にスペイン政府の財務がさらに悪化する形となり
危機を増幅してしまうおそれがあったためだ。
また、資本注入に関して、スペインが破たんした場合の債権について
ESMなどが優先権を持つのではないかという懸念が
金融市場でのスペイン国債買い控えの要因になっているため、
「支援融資にはESMなどに優先弁済権を付けない」ことが明記された。
ギリシャ危機はスペインに飛び火し
スペインの長期金利は危険水域である7%を突破している。
もしスペインが銀行の連鎖破たん、財政破綻などに陥れば
さらに大きな経済規模と累積債務残高を抱えるイタリアに危機が広がることになり、
それはユーロの崩壊、世界金融の崩壊的危機に直結して行く。
市場の持つ小さな懸念や不信が、傷口を修復不能なまでに大きくしてしまう懸念があるため
今回のユーロ合意は、色々な懸念事項をつぶすよう慎重に組まれているように見える。
そしてさらに、ESMなどの欧州安全網を
「柔軟で効率的な方法で活用」することができるとし、
イタリアが求めていた「安全網による国債買い支え」に道が開かれた。
(早ければ今夏にも実施可能との見解が示されている)
今回の合意内容は、金融市場では先送りされるだろうと見られていたものだけに
29日に9000円台を1ヶ月半ぶりに回復した日経平均株価など
日米欧で株価は上昇し、為替もユーロ高となっている。
しかしこれでユーロ危機が終焉するとの見方は
誰にもできないだろう。
危機の根はあまりに深くなってしまっている。
(2012年6月29日)
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