韓国ウォン安と所得流出
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韓国ウォン安と所得流出 (2012年3月)
韓国は、李明博政権の発足(2008年2月)以降、
公式には表明していないが、為替介入を繰り返すなどの手法でウォン安政策を実施してきた。
ウォン相場を日本や台湾などより安い水準で推移させることで価格競争力を向上させるという、
大企業を中心とした輸出拡大による成長路線だ。
ただし、ウォン安は、大企業の海外市場での躍進を支える一方で
輸入物価の上昇⇒所得流出(交易損失)の拡大
という負の側面も大きく膨らませている。
韓国銀行(中央銀行)は3月30日に発表した統計によれば
韓国の2011年の実質国内総生産(GDP)は、前年比3.6%増となったが、
購買力を示す「実質国内総所得」(GDI)は、前年比1.3%増にとどまった。
このギャップは、
貿易を通じて海外に流出した金額を示す「交易損失」によって生じている。
グローバル経済下での「成長路線」と「国民の豊かさ」
ウォン安政策を取り始めた2008年以降、「交易損失」は急拡大し、
2011年は65兆8200ウォンと、前年比6割も増加した。
原油や穀物などの値上がりにウォン安が重なり、
輸入価格が輸出価格以上に上昇したためだ。
交易損失によって海外に流出した所得は、
国内の購買力を低下させ、内需を抑制する。
2011年末の家計「負債」は、912兆9000億ウォンとなり、
前年比7.8%増加した。(過去最多を更新)
これは、中・低所得者の生活資金手当てのためとみられており、
名目GDPの伸びを上回るペースで拡大が続いている構造だ。
大企業の輸出拡大による成長路線を支えるために続けられてきたウォン安政策が
企業間、国民間の格差を広げ、社会にゆがみをもたらし始めているのだ。
4月11日投開票の総選挙に向けた選挙運動の中で
最大野党である民主統合党は
「1%の大企業ために、99%の国民が苦しめられている」と李政権を非難。
セヌリ党も「国民生活重視」へ経済政策の舵を切った。
グローバル経済下での成長路線と、国民間の亀裂(中・低所得層の増大)。
韓国は今、岐路に立っている。
それは現代のほとんどの国が抱える課題と共通のものだ。
(2012年3月31日)
《韓国の金融情勢》
韓国の金融情勢 | |
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政策金利 | 韓国銀行(中央銀行)は、政策金利の見直しを7カ月連続で見送った。 政策金利は3.75%。 世界経済情勢の不透明感が強まる一方、 インフレ率(2011年12月末、前年比4.2%)に配慮した形。 |
株価 | 韓国総合株価指数(KOSPI)は、2011年9月には、欧州債務問題などで 一時1600ポイント台まで下落したが、12月末以降上昇に転じ、 2012年3月初旬以降は、2000の大台を維持している。 |
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