金融緩和と株価・通貨の連動
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金融緩和と株価・通貨の連動 (2012年4月)
世界の株価、通貨は今、中央銀行の「金融緩和」との連動性を強めている。
史上類例のない金融緩和が世界の株高を演出し、
各国の金融政策が通貨価値を決定づける構造は当面の間続くだろう。
ただし、それがもたらすものは何か、私たちはきちんと見据えておかなければならない。
金融緩和マネーが世界的株高を演出
欧州債務危機による世界的な株価下落状況は
昨年12月21日に発表された欧州中央銀行(ECB)の50兆円に及ぶ巨額金融支援策により
一転して上昇に向かった。
さらに今年3月1日から開始されたECBの金融支援第2弾(約57兆円)は、
欧州発の金融不安を後退させ、ギリシャ問題を一時的に落ち着かせる効果を生み、
ドイツ株は、1-3月期に18%上昇、フランス株も8%上昇している。
日銀は、2月21日に1%の物価上昇をめどとする積極金融緩和を発表し、
そこから超円高⇒円安に転じるとともに、株価も加速し、
日経平均は1-3月期19.3%上昇。
(上昇率で世界トップとなっている)
昨年9月から5次にわたって政策金利を引き下げてきたブラジル(12.5%⇒9.75%)は
株価が1-3月期13.7%上昇している。
中央銀行の金融緩和策により、
これまでカラ売りを続けていたヘッジファンドは買い戻しに動き、
欧州危機を受けた過度の弱気心理が修正され、
カネ余り現象が世界の株高を演出している。
莫大な負債が膨らみ続ける中で、日銀も、ECBも、FRBも、各国の中央銀行も
これからも金融緩和を続けざるを得ない状況は続く。
つまり、当面、カネ余り⇒株価上昇は続くと見てよいわけだが、
一方で地下で進行する歪(ひずみ)は負のエネルギーをため続けている。
金融政策と連動する通貨
外国為替市場においても、
中央銀行の金融政策の違いと通貨が、極めて強い連動性を見せている。
右図は、今年3月1日⇒4月5日までの通貨騰落率を示したもの。
米国はこの間、金融緩和を見送っており、
4月3日に公開された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録要旨において、追加的金融緩和の必要性に言及した委員が「少数」から「2、3人」に減少したことが判明。
量的緩和第3弾(QE3)の可能性が後退した、との市場の見方が強まり、
ドル買いが進んだ。
イングランド銀行(中央銀行)の緩和観測も後退している。
一方、日銀の積極金融緩和策(2月21日)以降、円安が進み、
豪州準備銀行(中央銀行)は、4月3日景気認識を下方修正したことで、「利下げ観測」が強まっている。
金融緩和がため込む「負のエネルギー」
米国の金融緩和は、当面見送られるというのが市場判断のようだが、
大統領選を控えていることもあり、雇用統計などの数字から今後は緩和へ動くだろう。
日銀も、株価、金利などの動きにより、さらなる金融緩和に動くのは確実。
一時的におさまっているように見えるギリシャ危機も、
スペイン、イタリアに危機が広って行くことは必至であり、
ECBもさらなる金融支援拡大に動かざるを得ない次の状況が迫りつつある。
ブラジル・ルセフ大統領は、
日米欧などの金融緩和を「通貨のツナミ」と呼び、激しく非難している(ブラジルなどの新興国通貨が高騰し、輸出に打撃を与えるため)が、
金融緩和は、世界金融危機を何とか抑え込むために続けられているものである以上、今後も止めることができない。
そしてこれは、
「最後の貸し手」である中央銀行が大規模金融緩和に乗り出すことで
金融の水面下にため込まれて行く「負のエネルギー」を限界まで拡大する以外になくなった世界の現状を表している。
そのエネルギー規模が一定水準を超えたとき、
世界は巨大な地殻変動に見舞われる。
私たちは、新たな、制御不能な世界金融危機が準備される過渡期に入ったことを
きちんと見極めておかなければならない。
(2012年3月31日)
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