欧州、大手のリストラ策に政府介入
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欧州、大手のリストラ策に政府介入 (2013年2月)
欧州各国政府は、相次ぐ大手企業の人員削減・工場閉鎖などのリストラ策に対して
計画撤回などを求める介入姿勢を強めている。
欧州では、債務危機が一時的に鎮静化しているが、実体経済は厳しい状況が続いており
ユーロ圏の失業率は11.7%(2012年末時点)と、統計比較が可能な1995年以降で最悪の水準が続いている。
ユーロ圏での失業者は、1年間で180万人増加し
失業者数は1871万人に達する。(オランダの人口は1677万人であり、これを上回る)
こうした中で、大手企業の工場閉鎖や大規模人削減策が進められており
労働組合の反発も強まっている。
欧州各国政府は、この危機的状況の中で、介入を強めることで打開の道を探ろうとしている。
鉄鋼最大手ミタルの工場閉鎖
鉄鋼の世界最大手アルセロール・ミタルは、
ベルギー南部の工場の一部閉鎖と1300人の雇用削減を計画している。
ミタルは欧州全体の事業全体の見直しを進めており、フランスやルクセンブルク政府とも対応協議に入っている。
労働組合は反発を強めており、1月29日にはベルギー南部のナミュールで1000人超の大規模デモを実施。
(このデモは、一部が暴徒化、投石を繰り返すなどを行ったため、警察当局が高圧放水する事態となった。)
ベルギーのディルポ首相は
「政府と議会の多数は、労働者やその家族の側にいる。」と表明し、
ベルギー政府としてミタルの工場閉鎖に対し介入する姿勢を打ち出した。
フランス政府の介入
フランスでは、タイヤ大手グッドイヤーが仏北部アミアンの工場閉鎖を発表。
(1200人の雇用削減につながる可能性がある。)
フランス政府は計画撤回に向けた再交渉をグッドイヤーに求めるなど介入を開始。
また、2012年夏に発表された自動車大手プジョーシトロエングループ(PSA)の
工場閉鎖、8000人の人員削減計画にも修正を求めて介入。
そして、仏裁判所が2013年1月に同計画を停止するよう命令し、
プジョーは経営戦略の見直しに動かざるを得ない状況に追い込まれた。
(⇒「プジョー赤字最大に」)
見通せない先行き
ただし、こうした政府介入によて事態が好転していくかどうかは不透明だ。
2012年の欧州主要18カ国の新車販売台数は17年ぶりに1200万台を割り込み
自動車や鉄鋼の市場自体が縮小している。
介入により、かえって労働市場を硬直化させ、企業の競争力がそがれることで
経済低迷が長引くとの意見もある。
ワークシェアリングなどの手法も一部では進められているが、まだまだ不十分。
今後も混迷が続く可能性が高い。
(2013年2月5日)
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