バーナンキFRB議長「緩和が必要」
バーナンキFRB議長「緩和が必要」
FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は7月10日、
マサチューセッツ州での講演後の質疑応答において
「予見し得る将来においてアメリカ経済は極めて緩和的な金融政策を必要としている」
と発言しました。
バーナンキ議長は、5月23日に量的緩和の「出口」に言及し、
6月19日には「年内に証券等の買い入れを減らす」など「縮小日程」に踏み込んだ発言を行いました。
ご存じの通り、この発言を受けて世界の株価は急落し、円安の流れは逆転をし始め、新興国からは資金流出(株価下落、通貨安)が始まるなど、世界経済全体に重大な変動をもたらしたわけです。
今回の発言は、これまでの「出口」戦略発言を修正し、
市場に広がった「早期の緩和縮小」観測を鎮める狙いがあると考えられます。
「出口」発言は、バブル鎮静化を意図したもの
では、バーナンキ議長は、なぜ、「出口」について2度にわたって発言したのでしょう?
その答えは、この日の発言に現れています。
6月19日の議長発言を受けた市場の混乱についての反省を問われた質問に対する発言は以下。
「市場の反動はあったにせよ、将来のさらに困難な状況は避けられた」
「(混乱がなければ)リスクの高い取引がもっと積み上がっていた可能性がある」
つまり、経済的根拠のない株高などのバブルの芽を早めに摘みたかった、
ということです。
現在の世界を見渡して
好調といえる状況を呈している国は一つもありません。
欧州はマイナス経済に沈み込み、失業率は過去最悪の12.2%。
(ギリシャやスペインの若年層失業率は50%を超えています)
ドイツでさえ、1-3月期はマイナス1.3%という状況。
BRICsも全くダメ。
2011年1-3月期には9.9%の成長率を見せていたインドは、5%成長に低下(2013年1-3月)、5月の新車販売は「マイナス9%」。
中国は、水増しされた統計指標からはその実態がまだ明らかになっていませんが
おそらく急激な経済減速に陥っていると考えられます。
(5月の中国の輸出額は、なんと1%増。これまでの2桁増から急減)
「影の銀行」を使った住宅投資と公共投資のバブルは早晩はじけ飛び
金融危機の発生が現実のものになり始めています。
ブラジルは景気減速とインフレが同時進行するスタグフレーション状況にあり、
各地で大規模デモが発生しています。(サッカー・コンフェデ杯でのデモはみなさんご存知のとおりです)
つまり、世界経済は今、マイナスに向かっているわけです。
この中で、「FRBの量的緩和」に加えて「日銀の異次元緩和」が開始されました。
実体経済がマイナスに向かって行く中で、
日米の緩和マネーは
建設的な投資にではなく、「投機マネー」としてあふれ出しています。
減速している国の株価が上昇し、
日本では、まだ上向きのきざしが見え始めただけで怒涛の株高が始まりました。
6月19日のバーナンキ議長の「緩和縮小」発言は
この実体経済と株価等のアンバランスに「水をさす」意図をもって行われた、ということができます。
緩和マネーからの脱却は不可能
現在の世界は、日米欧の中央銀行による、「人類史上類例のない金融緩和」によって
かろうじて支えられています。
このマネー供給がなくなれば(少しでも減ることがあれば)、
世界経済は底割れし、深刻な経済・金融危機に陥るでしょう。
バーナンキ氏はそのことを百も承知です。
「出口」などありえない。
けれども一方で、緩和を続ければヘッジファンドなどの投機マネーは膨張し、
世界経済はより不安定化していくのです。
世界はすでに、
「緩和を止められない」
と同時に、
「緩和によるマネー膨張が、世界を不安定化することを止められない」
という矛盾から逃れられない状況にあります。
私たちは、このことをきちんと見据えた上で
自分の生活防衛を考えなければいけない時代にいるのです。