家計の債務が膨張する東南アジア
家計の債務が膨張する東南アジア
タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどの東南アジア諸国で
住宅ローンなどの「家計が抱える債務」が膨張しています。
低金利を背景に住宅ローンなどの家計の債務が増加してきたことは
これまで経済を下支えするプラスの作用をもたらしてきたのですが、
今後、金利上昇局面になったときは、一転して
消費を冷やし、健全な経済発展の足を引っ張る大問題に発展しかねません。
このため、各国の金融当局は新たな融資規制を導入するなどの対策を取り始めました。
各国の家計債務の状況と、導入される規制について見て行きましょう。
マレーシア
マレーシアでは、家計債務が2008年~2012年末までに6割増加しています。
(2012年末の家計債務残高は7564億リンギ、約23兆円)
リーマンショック後の世界金融危機状況の中で、マレーシアは金融緩和を行い
これが住宅ローンなどの個人債務を増大させました。
5年間で6割という家計債務の膨張は、たしかに経済成長を促したわけですが
すでにローン破綻に陥るケースが増加している状況です。
このためマレーシア国立銀行(中央銀行)は、
住宅ローンの返済期間を、最長45年⇒35年に短縮、
住宅ローン以外の個人向けローンは、最長25年⇒10年に短縮しました。
シンガポール
シンガポールでは、家計債務が2008年~2012年末までに5割増加です。
(2012年末の家計債務残高は、約20兆円)
シンガポール金融通貨庁は、
借り手のすべてのローン返済額と、新たに審査する住宅ローンの返済額を合計して
毎月の返済合計額が、月収の60%を超える場合は融資を認めない、
という融資規制を導入しました。
タイ
タイでも家計債務が急増しています。
(前年比増加率は、2009年2.8%、10年2.6%、11年5.3%、12年5.7%、2013年は12.0%)
タイの家計債務残高は、GDP比で80%近くまで積み上がっています。
利上げ局面では、家計破たんが増加する
リーマンショック後にBRICsを含め世界経済が減速に向かう中、
東南アジアは成長センターとして比較的堅調な経済発展を遂げてきました。
金融緩和による金利低下、融資審査の緩和、各国の住宅購入支援策などによって
不動産価格は右肩上がりで上昇し、借金を増やして住宅購入という流れが
東南アジア諸国で広がってきたわけです。
ただし、もし今後、米国で金融緩和の縮小が始まれば
マネーは新興国から米国に向かい、新興国通貨は下落し、それによってインフレが強まるおそれがあります。
物価高の状況になれば中央銀行は政策金利を引き上げざるを得なくなり、
変動金利のローン負担の増加が家計の負担が高め、
住宅価格の下落が銀行の不良債権を増加させることになります。
マレーシアなどの金融当局が融資規制を強化している背景には
今後どう動くか見えなくなった世界の金融情勢の中で
リスクの芽を早めに摘むことが必要との判断があるわけです。