米銀の融資増加とひずみ
米銀の融資増加とひずみ
米銀の融資は22ヵ月連続で増加
米国の「銀行の融資残高」は、6月時点で、7兆3060億ドル(約730兆円)となり、
前年同期比で「2.9%増」、22か月連続で増加を続けています。
とくに、この融資残高増を押し上げているのは「企業向け融資」で
6月の残高は「8.5%増」となっています。
この数字はアメリカ経済の順調な拡大傾向を示すものととらえられ、
「大企業の設備投資意欲の回復」「シェールガス革命による融資機会の増大」
といった解説が広く流布されています。
ただし、融資の中身を見ると「経済発展のひずみ」も現れているようです。
「中小企業への融資」と「住宅ローン」
今年3月末の「中小企業向け融資残高」は、前年同月比「2.2%増」にとどまっています。
(米連邦預金保険公社・FDIC)
これは、銀行側に、大企業に比べ信用力の低い中小企業への融資には慎重、
という側面もありますが、
中小企業自体が「いまだ財務リストラの過程にあり、借り入れで事業拡大する状況にない」
という実情がその背景にあると考えた方がよいでしょう。
新規雇用の7割を創出する中小企業は、
いまだ回復したとは言えない状況にあるのです。
一方、「住宅ローン」などの不動産担保融資は「0.3%増」にとどまっています。
(6月、FRB)
米国の住宅指標が好転しているにもかかわらず、
「住宅ローンがほとんど増えていない」というのは、ちょっと不思議に感じられます。
この現象はどういうことか?というと、
今、米国で住宅を買っているのは、「投資目的の」「大企業や富裕層」であり、
「キャッシュで」買っている、からなのです。
つまり、サブプライム危機で一旦はじけたバブルで
個人が負った痛みが癒えて、
個人が再び住宅購入を積極的に行っているいるわけではなく、
緩和マネーの恩恵を受けている一部の富裕層等が住宅投資に入っている
という「いびつ」さがそこにはあるわけです。
アメリカ経済がFRBの量的緩和によって支えられているという現実を
きちんと見なければならないですし、
FRBがもし本当に「緩和縮小」に向けて動き出したら何が起るかが
米銀の融資増加の実態に表れていると言えるわけです。