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金利と企業経営 

トヨタ、キャノン、パナソニックなど銀行借り入れや社債発行などを一切せず、
資本金と内部留保だけで経営する「無借金経営」の大企業もありますが
多くの企業は、経済活動をする上で金融機関や金融市場からの資金調達を必要とするため、
「金利動向」は経営に大きな影響を与えます。

原材料の仕入れなど企業運営上で必要となる「運転資金」や
新規事業の立ち上げ、生産能力増強、効率的なシステム構築などのための「設備投資」などで
資金調達が必要となり、お金を借りるわけです。

金利上昇は、中小企業経営を圧迫する

では、金利が上がると、企業経営にどのような影響が出るでしょうか?

金利と企業経営

銀行からお金を借りて金利を支払っている企業にとって
「金利上昇」は、「利払い負担の増加」を意味します。

右図の通り、とくに中小企業は、
大企業・中堅企業に比べて「借入金依存度」が高く、
営業利益に対する「利払い費」比率が高いため
金利上昇⇒利払い負担の増加の影響は大きくなります。

中小企業にとって金利上昇は
利払い負担を膨張させ
経営を圧迫するものなのです。

大企業は、
 ・「内部留保」という社内資金を貯めている
 ・「株式発行」という資金調達手段がある
ため、借入金依存度が低く、利払い負担を低く抑えることが可能なのです。
( 株式発行は、株主の出資ですから、お金を返す必要はありません。)

借入金依存度の低い企業ほど、金利上昇に強い

企業財務の健全性を表す指標に「借入金依存度」があります。

企業と金利(銀行の貸出先)

  借入金依存度(%)= 有利子負債 ÷ 総資産 × 100

有利子負債とは、簡単に言うと「利子をつけて返す必要のある借金」
総資産は、「借金を含めた資産総額」のことです。

一般に、借入金依存度が25%以下の企業を「優良企業」としますが、
中小企業では借入金依存度が50%を超える企業は多くあります。

右図のとおり、日本の銀行の貸出先に占める「中小企業」の割合は
4割以上であり、
いかに中小企業が銀行に依存した経営を行っているかがわかります。

中小企業は、
「金利動向」と「銀行の貸し出し方針」に、その命運を左右される状況下にあるのです。

低金利政策は、景気対策となるのか?

では、「金利が下がれば景気が良くなるか?」について考えてみましょう。
(低金利政策は、景気対策となるか?)

金利が下がれば、とくに借入金依存度の高い中小企業にとっては
利払い負担を抑え、経営を楽にします。

高い金利での借り入れを、より低い金利での借り入れに代えて行く動きも出るでしょうし、
これまで我慢していた設備投資に踏み切る決断をする企業も出てくるでしょう。

大企業は、低金利での社債発行が可能になるため、
低利での長期資金確保のチャンスとなります。

つまり、金利の低下は、中小企業の利払い負担を軽減し
企業経営の選択肢をひろげるものになることは確かです。

ただし、そこで考えなければならないのは
金利が下がれば、企業がリスクテイクに向かい、積極的な設備投資を行い、景気が上向くか?
ということです。

たしかに、低金利は、事業拡張や・新規事業参入のコストやリスクを下げてくれます。

ただしその条件は、そこにビジネスチャンスが見込めることです。

消費拡大、需要増、景気が良くなる、などの見通しが持てなければ
資金調達コストがいくら安くても、企業が投資姿勢を強めることはないでしょう。

この場合企業は、低コスト資金を、財務体質改善やリストラ資金として使うことになります。

つまり、低金利政策は
低成長時代において景気を上向かせる「条件」をつくることはできるが(必要条件)、
それだけで景気を上向かせることはできない(十分条件を与えるものではない)、
ということです。

日銀が膨大な資金を金融市場に流し込んだところで
それが設備投資などの実体経済に使われるのはごく一部で
「投機資金」を膨張させて、経済のひずみを拡大させる可能性もあるわけです。

私たちが経済の先を読もうとするときは、
現在の金利水準だけではなく、お金がどこに流れ、動いているかをよく見極めなければならないのです。 


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