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実質金利

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実質金利  

インフレ・デフレと本当の金利

実質金利と名目金利について考えてみたいと思います。

たとえば、「定期預金金利が0.5%から1%に上昇」というニュースが出たとき
預金者である私たちは、それはグッドニュースだ!と単純に喜べるか、ということです。

ここで考えなければならないのは物価上昇率がどう動いているのか?ということです。

物価が2%も3%も上昇しているのに、預金金利が0.5%しか上がらないのなら
ちっとも良いニュースなどではないわけです。

このように、私たちが普段目にしている預金や住宅ローンの金利は「名目金利」であり、
物価上昇率を加味した「実質金利と分けて考える必要があるのです。

実質金利の単純な計算式は
   実質金利 = 名目金利 - 物価上昇率
です。

では、名目金利、物価上昇率と実質金利の関係について考えてみましょう。

物価が上昇しているとき

まず、物価上昇期(インフレの時)について。

「物価上昇率3%、1年物定期預金の金利が5%」とします。

この場合、実質金利
 5%(名目金利) - 3%(物価上昇率)= 2%(実質金利
ということになります。

定期預金に100万円を預けると、1年後に105万円になり、
100万円の物は、1年後には物価上昇で103万円になるということで、
2万円得するということになります。
(100万円に対する2万円の儲け分が、実質金利です)

では、「物価上昇率3%、1年物定期預金の金利が2%」とします。

この場合、実質金利
 2%(名目金利) - 3%(物価上昇率)= ▲1%(実質金利
ということになります。

定期預金に100万円を預けると、1年後に102万円になるが、
100万円の物は、1年後には物価上昇で103万円になるということで、
1万円「損する」ということになります。
実質金利はマイナスです)
(預金したお金は、実質的に減るということです)

つまり、「金利の本当の価値は、実質金利で判断する」ということです。

物価が下落しているとき

物価が下落している場合(デフレ)を考えてみましょう。

「物価上昇率▲1%、1年物定期預金の金利が0.5%」の場合
 0.5%(名目金利) - ▲1%(物価上昇率)= 1.5%(実質金利

この場合、100万円の物は、1年後、99万円に値下がりし、
預金金利は5000円つくので、合計1万5000円、実質的に得する、ということです。

つまり、物価が下落しているとき(デフレ)は、
たとえ金利がゼロがったとしても、実質金利(本当の金利)はプラスになる、ということです。

そしてこの状況は2000年以降の日本に(2008年を除き)ほぼ一貫していたことでもあります。

消費者物価指数の推移(前年同月比、2001年~2012年)

つまり、
金利の本当の価値は、物価上昇率との関係で見なければならない
ということなのです。

借り入れ金利の場合 (インフレと借金)

これまで預金金利(貸出し金利)の場合について「実質金利」の考え方を紹介しましたが
「借り入れ金利」(住宅ローンや企業の借入など)の場合はどうでしょうか?

基本的には、これまでの説明と同じです。

例えば、固定金利2%で借りた場合、物価上昇率が3%なら
 2% - 3%(物価上昇率)=▲1%
となり、実質金利はマイナス1%、です。

つまり、支払うべき利息分が物価上昇の影響で、実質的にゼロ以下になる(得する)
ということになります。

ただし、借り入れの場合は、支払う利息分は確定していますが
実際に支払う大元である自分の収入(企業の売上・利益)が物価上昇で増えるかどうかは
実は不確定です。

ここが預金金利の場合とは異なります。

物価上昇によって
自分の給料や、企業収益が上がるかどうかは、個々の状況によって違いがあるということです。

ただ一般的には
物価が上がれば給料も上がりやすくなりますし、
企業の売上高も物価上昇を反映して増える可能性は高いでしょう。

政府は現在、膨大な累積債務を抱えていますが
物価が上がれば少なくとも消費税収入はその分増えるでしょう。
利払い分は圧縮できます。

つまり、確定的ではないけれど
実質金利が下がれば、その分利息支払いは楽になり、得をする、ということです。

言いかえれば、「固定金利で借金して、その後に物価が上昇すれば、得する」
ということですね。

そしてこれは、利息分だけでなく元本分についても同様です。

物価上昇とは、「お金の価値の低下」を意味します。(物の価値の上昇)

100万円で買えた物が120万円に値上がりしたとすれば(インフレ)
100万円の価値はそれだけ下がったということです。

この場合、給料が50万円の人は60万円に上がる可能性がありますし、
企業の売上高1000万円は1200万円に上がる可能性が高いわけです。

こうなれば借金の元本についても返済しやすくなります。
(ただしこれは、「固定金利」の場合です。)
(「変動金利」での借入は、物価上昇で金利も上がりますから、返済額を膨らませます。)
(物価の上昇が予測されるときは、「固定金利で借りる」が正解なのです。)

これは、実質金利の話から派生して、
「物価上昇は私たちの暮らしに何をもたらす?」という話なのですが
非常に重要な部分でもあります。

逆に言うと、借金ではなく「貯金の場合」は
物価上昇はお金の価値低下を意味するのですから、
物価が上昇すればするほど「損する」ことになります。
(物価上昇が予測される場合は、固定金利ではなく、「変動金利の預金」が正解なのです。)



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