米銀の証券含み益が減少
米銀の証券含み益が減少
米国銀行の「証券含み益」が急速に「減少」しています。
米連邦準備理事会(FRB)によると、
2012年末に「400億ドル」(約4兆円)あった米国・商業銀行の米国債などの有価証券含み益は
2013年6月26日時点で「60億ドル」まで減っています。
これは、バーナンキFRB議長が、量的金融緩和の年内縮小に言及したことによって
長期金利が上昇し、米国債価格などが下落したことが背景になります。
(米国債利回りは、1.8%⇒2.5%に上昇)
長期切り上昇は、プラスに作用する?
2008年のリーマンショック以降、米銀は運用難に陥り、米国債などを買い進めてきたわけですが、
5月末以降の金利上昇局面においても米国債を売却することができず、含み益を減らしたわけです。
(含み損益がマイナスに陥った銀行もある模様です。)
一般的に言えば、長期金利上昇が必ずしも銀行の収益減につながるわけではありません。
「短期資金を低利で調達して、長期で貸し出す」通常の融資業務においては
「利ザヤ」が拡大してプラスに作用することになります。
では、今回の長期金利上昇は
アメリカ経済にプラスに作用するでしょうか?
最近の米国の経済指標(雇用統計や住宅価格指数など)からは、
一見、米景気は好調に見えるのですが、
実態としては「金融緩和マネーに支えられ」、何とか好調を維持している、と言えるのです。
つまり、実体経済の拡大局面でみられる「企業の設備投資などの資金需要」は「弱いまま」、なのです。
企業の資金需要に引っ張られる形で金利が上昇したわけではなく、
「FRBがマネーを絞り始めるかもしれない」という恐怖から持ち上がった金利上昇、ということを考えると
長期金利が上昇しているからといって、企業への貸出金利を上げるわけにはいかないのです。
つまり、「利ザヤは拡大せず」「証券含み益は減って行く(マイナスになって行く)」ということです。
悪循環の可能性
米金融当局は2014年から新しい自己資本規制「バーゼル3」を段階的に導入する予定です。
これは、サブプライム問題、リーマンショック、世界金融危機の反省から
国際業務を展開する米銀の経営の安定性を高めることが目的です。
証券含み損益がマイナスになれば、自己資本が目減りすることになり、
銀行業務はそれだけ制約されることになります。
銀行が自己資本を維持しようと思えば、有価証券の保有を抑制し、
売却も考えなければならなくなる、ということになります。
つまり、
長期金利の上昇⇒証券含み益のマイナス化⇒自己資本の減少⇒有価証券の保有抑制(売却)
⇒さらなる長期金利上昇(国債価格などの下落)
という悪循環が発生する可能性がある、ということです。
こう考えれば、バーナンキ議長が「緩和縮小」を口にしたとしても
実際上それは「できることではない」ということがわかります。
米国経済も、世界経済も、見かけ以上に深刻な状況にあるのです。