中国の金2012/6
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中国が金の輸入を急増 (2012年6月)
中国が金輸入を急増させている。
これまでずっと月間で数トン程度で推移してきた(2010年以前)中国の金輸入は
2011年4月に突如20トンに跳ね上がり、
2012年4月には100トンを突破した。
中国政府は金の輸出入統計を公表していないため
市場がウォッチしているのは香港当局が公表している貿易統計。
上記の数字は、香港から中国への金輸出額。
香港当局の数字から計算すると、
中国は年間800トンのペースで金を積み上げていることになる。
世界の金の総産出量は2818トンにすぎない。
中国が積み上げる年間800トンという数字がいかに大きいかわかる。
金を積み上げているのは人民銀行?
この中国の金輸入急増について、市場では様々な推測が飛び交っている。
一つは、個人の金投資の増加説。
金の輸入自由化に伴い、個人が積極的に買い増している、という見方だ。
しかし、富裕層を中心とした個人の投資が主導しているとするなら
中国の商慣行から春節の時期(2月)にもっとも輸入が増えるとう現象が起るはずだが
実際は春節商戦が終了した4月以降に金輸入が急増している。(2011年)
(2012年も2月39トン、4月100トンと、春節とは無関係の動きになっている)
つまり、金輸入自由化⇒個人投資の急増、という見方はかなり無理がある。
そこで多くの金融アナリストが指摘しているのが
中国人民銀行(中央銀行)による金準備の増強説である。
中国政府が金輸入を自由化する一方で、金輸出を規制し続けているのも
中国国内に意図的に金を積み上げようとする当局の意図がある、という見方だ。
中央銀行が金準備に傾斜する理由
中国は、世界最大の金産出国であり、
昨年の推定産出量は371トンだ。
(これまで世界最大の金産出量を誇っていた南アフリカは
1995年の524トン⇒2010年は190トンに急減し、中国にトップの座を奪われている)
これに年間800トンもの金輸入が加わる。(金輸入から金輸出を引いた額)
中国の政府高官は
「国としての金保有量を8~10年以内に1万トンまで増やすべきだ」と発言している。(2009年)
つまり、中国政府・人民銀行は、政策的に金準備を急増させていると見るのが妥当と言える。
ロシア、メキシコ、タイ、インドなどの新興国も同様の動きを見せている。
これは米ドル世界基軸通貨体制への不信の表れだ。
米ドルの基軸通貨としての価値が揺らいだり、
世界的なインフレが発生した場合、
究極の価値基準である金の価値は高まり、金保有こそが大混乱時の保険の役割を果たす。
現在は、欧州債務危機の中で、マネーは米国に向かっているが、
状況が変わればドル危機が再燃する可能性は高く、
世界的金融緩和は悪性インフレのマグマをため込んでいるといえる。
中国は、したたかに次の時代への布石を打っているのである。
(2012年6月28日)
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