ソルベンシーマージン比率
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ソルベンシーマージン比率
ソルベンシーマージン比率とは
生命保険や損害保険などの保険会社の「財務の健全性指標」の一つで
「通常の予測を超えて発生するリスクに対する支払い余力」を示す行政監督上の指標です。
保険会社は、責任準備金を積み立てることにより将来の「保険金支払い」について準備しています。
しかし、例えば大災害、株価の大暴落など、通常予測できる範囲外とされるリスクが発生した場合
はたして約束している保険金をきちんと支払うことができるのか?という問題が残ります。
こうした「予想外の大規模危機の発生時」における「支払余力」を数値化したものが
ソルベンシーマージン比率ということ。
ソルベンシーマージン比率が高いほど、安全度が高いとされ、
200%を下回った場合は、金融庁による「早期是正措置」の対象となります。
計算式は以下。
ソルベンシーマージン比率 = A / ( B × 0.5 )× 100%
A:ソルベンシーマージン総額
…純資産、価格変動準備金、異常危険準備金、土地含み益、有価証券損益 など
が各計算式により産出する
B:通常の予想を超えるリスク総額
…死亡・入院等の予想を超える発生リスク、有価証券などが予想を超えて変動するリスク
巨大大災害リスク などの総額
なお、ソルベンシーとは支払能力、マージンとは余力、を指します。
数値が高ければ安心か?
ソルベンシーマージン比率が200%を下回ると予想外の事態における支払い能力に問題アリとして
金融庁の早期是正措置などの対象となるわけですが
では、200%を上回っていれば、その2倍の400%を上回っていれば
その保険会社は安心か?という疑問があります。
過去、実際に破たんした保険会社のソルベンシーマージン比率を見てみたい。
- 第百生命(1999年3月破綻)…304%(破たん直後)
- 大正生命(2000年8月破綻)…384%(1999年3月時点)
- 協栄生命(2000年10月破綻)…342%(1999年3月時点)、210%(2000年3月時点)
- 千代田生命(2000年10月破綻)…396%(1999年3月時点)、263%(2000年3月時点)
- 東京生命(2001年5月破綻)…478%(1999年3月時点)、446%(2000年3月時点)
- 大成火災(2001年11月破綻)…1022%(2000年3月時点)、815%(2001年3月時点)
このように、ソルベンシーマージン比率が破綻の数か月前まで400%程度でも破綻しており、
1,000%を超えていても破綻した大成火災などのケースもあるということです。
こうした事態を受けて、金融庁は算出方法などを見直し、規制強化を行っているが
2008年10月に破たんした大和生命は555%でした。(破綻時)
つまり、ソルベンシーマージン比率が400%であれ、800%であれ、
けっしてそれだけをもって「安心だとは言えない」ということ。
もちろんライフネット生命などのように3,000%を超える保険会社はより安全性が高いと見ることはできるが
現代の金融危機は、年々巨大化しており、従来では考えられない事態が次々に現れています。
長期契約となる生命保険を選択する場合は、よくそのところを考慮するべきでしょう。
また、余談になりますが
金融庁がソルベンシーマージン比率などの数値算出を厳格して行こうとする政策そのものが
保険会社の資産運用にゆがみをもたらしている側面があることも指摘しておかなければなりません。
金融庁の算出規格そのものが安全性確保の阻害要因となる場合もあるということです。
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