生保・損保は、株高でも株売却
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生保・損保は、株高でも株売却
(2013年2月15日)
大手生命保険会社、損害保険会社は、株式保有の圧縮を今後も一貫して続ける見通しだ。
- 大手生命保険4社と大手損保3グループは、2012年4~12月期に株式を7500億円圧縮(簿価ベース)
- 生損保の株式売越額は、昨年12月、今年1月ともに1500億円超(昨年9月の3倍以上)
株価が上昇し始めた2012年11月以降も株売却の姿勢を緩めていない。
- 損保3グループは2013~15年度に7000億円の株式を売却予定
- 大手生保も株式の圧縮を継続する
大手生保・損保は、2013年度から3年間で1兆円超の株式を売却する見通しだ。
生保・損保が株売却を進める理由
日経平均株価は、2012年11月15日の8,829円から、2013年2月15日の11,173円(終値ベース)へ
3ヶ月間で2300円以上上昇しており、
日銀がさらに金融緩和を進めることからも株価上昇局面は今後も続くと考えるのが普通だ。
この状況下でなぜ、生保・損保大手は株売却を継続しようとするのか?
2つの要因がある。
①この間の株式評価損
生保・損保大手各社はここ数年の株価低迷による評価損によって収益を悪化させてきた。
4生保と3損保の2012年4~12月期の有価証券評損は4691億円。
(ただし、2012年4~9月期に比べれば株価上昇で評価損は「半減」している。)
この間の失敗の経験から、株式保有の圧縮という逃げの姿勢を強めている。
ソルベンシーマージン比率とは、通常では予測されない非常時に置ける「支払い余力」を示す
保険会社の健全性指標であり、この数値が200%を下回ると金融庁から早期是正措置が課される。
2013年3月期からソルベンシーマージン比率における株式のリスク量が従来の2倍に引き上げられ
さらに今後も一段と厳しい規制が敷かれる可能性が高い(ソルベンシー2)ため、
株価上昇局面であっても株式保有を増加させられない。
こうしたことから生保・損保大手は、株式を減らし、その分を「国債」に振り向けている。
つまり、株価上昇局面にありながら株式売却を進め、国債購入を行うという
いわば市場のトレンドとかい離した運用を行い、これからもそれを継続しようとしているということ。
これが何を意味するか?
日銀に強制されている空前の金融緩和は、当面の期間の株価上昇と同時に国債下落のリスクを増大させる。
生保・損保は、当面の利益機会を放棄し、自らリスク資産を膨張させていると言えるのである。
当局の規制にただ従い、厳格な経済見通しから立脚した運用方針を取れず、
トレンドからかい離し、「みんなで渡ればこわくない」式の一様な行動は奇異であり
もっと言えば、生保・損保の未来を(保険を掛けている人々の未来を)絶望的な場所に向かわせている
と評価せざるを得ないのである。
(2012年2月15日)
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