モーゲージ担保証券
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モーゲージ担保証券(MBS) (金融用語)
Mortgage-Backed Securities : MSB
住宅ローン債権の流動化を目的とした、米国の代表的資産担保証券。
米国では、住宅購入者が住宅ローンを借りる場合、銀行などの金融機関で住宅ローンを申し込む。
住宅ローンを貸しだした金融機関は、
多数の住宅ローンの中から金利・期間・債務者のクレジットスコア(信用状態を数値化したもの)が
類似した住宅ローンを集めてファニーメイ、フレディマックなどの政府系機関を通じて証券化し、
市場で売却する。
政府機関の保障のない住宅ローン証券(モーゲージ担保証券)は民間MBSと呼ばれ
信用力の違いなどによって
ジャンボ、オルトA(Alt-A)、サブプライムなどに分類される。
住宅ローン融資を実行した金融機関は、
証券化し、それを機関投資家に売却することで、ローン焦げ付きという信用リスクから解放され、
(リスクは投資家に転換される)
住宅ローン資金の借入者から高い手数料を取ることで、高い収益を実現することができる。
モーゲージ担保証券とサブプライム問題
住宅ローンの証券化により、
リスクから解放され、高い収益を見込めるようになった金融機関は、住宅販売会社と連携し、
信用力・返済能力に疑問符が付くサブプライム層と名付けられた低所得者層に対して
不動産の販路を一気に広げていった。
米国では、住宅には政府機関や民間保険会社のローン保険がかかり、
さらにファニーメイ、フレディーマックなどの政府機関が元利金の支払いを保障する。
(エージェンシーMBS)
格付会社は、どのようなモーゲージ担保証券であれ、AAA(トリプルA)の最高位の格付けを与え、
ローリスク・ハイリターンのサブプライムMBSは飛ぶように売れ続けた。
「金融機関のリスクからの解放」「MBSという新たな金融商品の人気」
「住宅ローンの政府保証」、そして「FRBの金融緩和」が相乗効果を生み、
米国の住宅価格は上昇の一途をたどり、バブルが形成されるに至った。
この住宅バブルが崩壊し、サブプライム問題として顕在化したのが2007年である。
モーゲージ担保証券の暴落と世界金融危機とFRB
銀行+住宅販売会社は、
「最初の3年だけ返済額が低く設定されている」など、いびつな返済契約により
「自分にも買える」と錯覚を起させ、とにかくローンを組ませるという手法を取ってきた。
そして当然、ローン契約締結から2~3年後に返済額が通常レベルになったとたんに返済が不能になるという事例が頻発した。
こうして住宅ローンの焦げ付きは拡大し、
『虚構の構図』が生み出した住宅価格上昇トレンドは逆回転に向かい、バブルは崩壊。
モーゲージ担保証券(MBS)や、他の証券と一緒にして再証券化したCDOなどの価格は暴落した。
これがMBS、CDOを大量に抱え込んだ金融機関の不良債権問題を発生させ、
リーマンショックという世界金融危機の引き金となったのである。
FRB(米連邦準備制度理事会)は、
値がつかないほど暴落したモーゲージ担保証券を買い取ることで事態を鎮静化させたが
その分大量に放出されたドルは、金融システムをひずませ、新たな危機を準備している。
日本のモーゲージ担保証券
日本では、1995年に三和銀行(当時)が初めてモーゲージ担保証券を発行した。
住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)は、
2005年から55兆円に及ぶ住宅ローンの証券化を始めた。