経済危機/日本と世界

郵政・アフラックの連携とTPP

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郵政・アフラックの連携とTPP

日本郵政は、米保険大手アメリカンファミリー生命保険(アフラック)と
がん保険事業で提携することを発表しました。
(日本郵政の西室泰三社長、アフラックのダニエル・エイモスCEOが7月26日発表)

日本郵政とアフラックはがん保険商品を共同開発し、
全国2万の郵便局を使って販売するという従来にない全面的な提携となります。

これにより、これまで進めてきた日本生命(ニッセイ)とのがん保険での提携は
事実上撤回ということになります。

なぜ、今、唐突にこのような発表がなされたのでしょうか?

そこには、日本が交渉に正式参加する環太平洋経済連携協定(TPP)において
米国側がなにを求めているのか、
日本はどのようなスタンスを取ろうとしているのか、
を理解する上での最重要ポイントがあります。

第3分野での米国保険会社による独占をつくったのは、日本政府

ここで、医療保険などの「第3分野」における、
米国の保険会社の日本市場参入の歴史を振り返ってみましょう。

まず、保険は以下のように分類されます。

  • 第1分野 …定期保険、終身保険などの生命保険
  • 第2分野 …自動車保険や火災保険などの損害保険
  • 第3分野 …上記以外のがん保険、医療保険など

「公的」医療保険制度がほぼ未整備と言える米国において、
民間医療保険は保険会社の中心商品となっています。

そして、日米の保険摩擦の末、
1972年にアリコ・ジャパンが、1974年にアフラックが、日本市場への参入が認められます。

そして、そのとき日本政府がなにを行ったかといえば、
「第3分野における日本の大手生命保険会社の『参入規制』」
外資と、中小生保にのみ、第3分野への参入を認める
というものでした。

中小生保に新たな分野での商品開発と展開ができるはずもなく、
日本政府は事実上、「米保険会社に第3分野を独占させる」という政策を発動したわけです。

その結果、日本の保険「第3分野」市場における「米国保険会社」のシェアは「8割」となり、
寡占体制がつくられます。

そしてようやく「日本の大手保険会社」に第3分野参入が解禁されたのは2001年。
25年以上にわたって、米国に市場を明け渡す政策が続けられたわけです。

日本で荒稼ぎする米保険会社が、次に日本に要求したこと

日本政府による、米保険会社への「第3分野の明け渡し」によって
アフラックは、「営業利益の8割を日本市場で稼ぐ」という特異体質を持つ企業となっています。

もう一度言います。

アフラックは、「米国で、ではなく」「日本で、利益の8割を得ている」のです。

米プルデンシャル生命も、営業利益の5割を日本で稼いでいます。

もうこれは、手放すことができない特権でしょう。

米政府はこれまで(そして現在も)日本に対して
「日本政府の介入が、市場の自由な競争を阻害している」
として、自由化要求を続けてきました。

けれどの現実に行われてきたのは
「日本政府の介入によって、米保険会社に、日本の保険市場を独占させる」
という「政府介入による、米保険会社のための、自由競争の阻害」だったわけです。

そして、米国側で日本にこの要求を続けてきたのが
アフラックの日本代表であり、
米通商代表部(USTR)日本代表、日米経済協議会会長を務めてきた
チャールズ・レイク氏です。

レイク氏は、1990年代以降の日米保険協議を主導し、
日本の簡易保険(政府の信用を背景に、2万の郵便局をつかった保険事業を展開)を
「民業圧迫」だと批判し、「郵政分割民営化」を求めてきたわけです。

一方、日本側として郵政民営化を推進してきたのが
郵政民営化推進委員長を務めてきた西室泰三氏です。

西室氏は、委員長時代に、かんぽ生命の「がん保険」開発をストップさせてきた人物。

そして、この6月、安倍内閣は、
昨年12月に副社長から社長に昇進したばかりの坂篤郎氏を更迭、
西室泰三氏を社長に据え、
西室新体制の日本郵政とアフラックの「がん保険」での全面提携の発表
となったわけです。

つまり、今回の提携は、
日米両政府による「出来レース」です。

少し長くなりましたので、
これにより日米政府がなにを狙っているのか?
TPPの意図はどこにあるのか?
については、次回に書きたいと思います。

郵政-アフラックの提携とTPP(2)


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