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長期金利2013/5

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長期金利の急上昇が意味するもの


《ポイント》

  • 長期国債が5月に入り急落している。(長期金利が急上昇している。)
  • 日銀の国債の買い入れ緊急拡大は、効果が一時的だった。
  • 日銀のコントロールは、効かなくなり始めている。
  • 国債急落は、「国債リスク」を投資家が意識し始めたことによるもの。
  • 日本の債券市場の混乱は、世界の債券バブル崩壊をもたらす構造を持っている。

東京株式市場で日経平均株価が1万5000円台を回復し、5年4カ月ぶりの高値を付ける一方、
債券市場は乱高下が収まらず、不穏な空気が立ち込めている。

国債価格、いわゆる長期金利は4月5日の時点で0.315%という歴史的な高値、低金利をつけたが
5月に入り状況は一転している。

5月15日の国債急落

5月15日には一時0.92%に10年物国債利回りが上昇するという異様な値動きとなった。

この日、外為市場では円安が再度進み、株式市場では日経平均が1万5000円を回復した。

しかし債券市場では10年物国債が午前中に大きく下落し、利回りが0.9%台に突入したのだ。

日銀はこれを見て国債買い入れを緊急拡大した。

この日銀買入拡大で一時的に価格上昇(利回り下落)に向かったが長続きせず
前日比下落で終了することになる。

つまり、日銀のコントロールが効かない状況が生じた、ということになる。

これはなにを意味するのだろうか?

国債保有リスクの顕在化

「量・質ともに異次元の金融緩和を実施する」ことを表明した黒田日銀の新たな金融緩和策は
買い入れる国債の平均残存期間(償還までの期間)を従来の3年弱から
国債発行残高の平均並みの7年程度に延長し、
これまで買い入れを行っていなかった40年債までをふくむ全てのゾーンを買い入れ対象とした。

特に超長期債における買い入れ量の増加はすさまじく、
月々の購入額が1000億円程度から8倍の8000億円に増えることとなった。

これにより長期国債の利回りは低下し、
とくに超長期国債において5割近い保有率を持つ生保は「逆ザヤ」状態に追い込まれてゆく流れが生じ
国債売り⇒国債以外への資金シフトを余儀なくされる。

「日銀の国債買い入れで低金利を維持し、生保などの機関投資家の資金を国債以外に向かわせる」
これが日銀の描くシナリオであり、
4月まではこのシナリオ通りに事が進んできた。 (⇒生保、外債投資へシフト

しかし5月に入り状況が変わる。

日銀とういう強烈な買い手が存在するにもかかわらず、国債売りが一気に動き始めた。

通常なら、生保はここで国債買いに廻るはずだ。

最も安全性の高い国債の価格が下がり、利回りが上がるのだから。

けれども生保をはじめとする国内の機関投資家が国債買いに回った形跡はない。

債券から株式にシフト?

この状況について新聞をはじめとした多くの論評は
「株価高騰を背景にして資金が債券から株式市場にシフトしたため」
と一般的に触れているだけだ。

しかしそうだろうか?

金融市場において債券投資家と株式投資家は別の組織(人)であることの方が多く、
ヘッジファンドを除けば、通常このような投資シフトはあまりとられない。
(しかも5月以降の動きは極めて短期のものであり、余計にこの説明には無理がある)

考え得ることは、これまで国債を買い支えていた投資家が「国債保有リスク」を意識し始め
売り方に廻り始めた、ということだ。

「国債価格の下落リスク、金利上昇リスクを意識した投資行動へのシフトが始まった」
ということであり、
だからこそ、国債価格が下落しても買いに回らず、
日銀の買い入れ拡大をむしろ「売りの好機」ととらえて売り進めた
と見るべきではないだろうか?

この変化が意味することはあまりにも大きい。

日本売りのとき、世界中の債権も暴落する

国債保有リスクを織り込んだ投資行動へのシフトが始まったのであれば
日銀シナリオ機能しなくなり、日銀のコントロールは効かなくなるなって行く。

ヘッジファンドは日本売りのために債券市場でのウェイトを高め、
国債先物市場でもさらに占有率を上げるだろう。

また、生保は、日本国債から外債にシフトチェンジしているが
この動きが南欧などの国債価格上昇をもたらし、米国債を買い支えている。

黒田日銀の異次元緩和は、日本における株高や円安だけでなく、
世界の実態に合わない債券価格上昇(債券バブル)をもたらしている。

つまり、日銀シナリオのコントロールが本当に効かなくなったとき
日本売り(日本国債暴落)が始まり、
それは世界中の債券暴落を連鎖的に引き起こすものとなる、ということである。

もちろん株式も暴落し、制御できない金融恐慌が起る。

中央銀行が尋常でない金融緩和カード使いきった中での金融危機は
これまでの歴史にない異常なものとなる可能性が極めて高い。

5月に起きた国債急落とは、
そのシグナルを私たちに示し始めたものというべきだろう。

これを見越した投資行動が私たちにも求められているのである。

(2013年5月18日)


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