生保、銀行が金利上昇の対応策を開始
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生保、銀行が金利上昇の対応策を開始
(2013年2月4日)
大手生命保険会社4社、3メガ銀行が、金利上昇局面への対応策を開始した。
大手生保4社はが保有する債権残高は、2012年9月末時点で約61兆円に達し、
3メガ銀行の国債残高は108兆円に膨らんでいる。
「株式を減らし」「国債などの債権を増やす」という運用方針をとる大手生保、銀行は
これまで多額の売却益や含み益を確保してきた。
ただ、金利が大きく反転する状況になれば、一転して評価損が膨らみ、収益を圧迫する。
債券保有額が膨大になっているだけに対応策を急ぐ必要があるとの判断に傾き始めている。
大手生保は「簿価評価への転換」、3メガ銀は「国債の平均残存期間短縮」
という方法で対応を取り始めた。
生保の簿価評価への転換
超長期の資産運用にあたる保険会社には特例措置が認められている。
保有証券の評価を「時価評価」から「簿価評価」(取得時の価格での評価)への切り替え、である。
簿価評価にすれば、金利が上昇して債券の時価が暴落したとしても評価損を計上しなくて済み
長期の国債を保有しやすくなる。
2012年4月~9月末までに
第一生命は約1兆2000億円、明治安田生命は約1兆円の債権を簿価評価に移しており、2012年末時点で大手生保4社の合計で、約41兆円が簿価評価となっている。
メガ銀は、国債残存期間の短期化
3メガ銀は、国債の平均残存期間を短く保つことで、金利上昇時の損失額を抑える方針だ。
《保有国債の平均残存期間》
- 三井住友銀行…2.1年
- みずほフィナンシャルグループ…2.5年
- 三菱UFJフィナンシャルグループ…3年
残存期間の短いの国債であれば金利上昇で含み損が膨らんでも、
満期まで持ち続ければ元本は返ってくるというメリットがある。
国債暴落リスクへが認識され始めた
日銀の試算によれば、大手銀行が保有する債権の評価損は
金利が2%上昇したときは7兆円、3%上昇で10.3兆円増加する。
評価損により自己資本が減り、融資は縮小し、実体経済に悪影響が及ぶ。
2013年度末の国債発行残高は過去最高の855兆円に膨らむ見通しであり、
財政規律への市場の視線は厳しさを増している。
また、外国勢による日本国債の保有比率は9.1%と過去最高になっている。(2012年9月末)
足の速い外国勢の比率が高まることは、
何かをきっかけに金利暴騰・国債暴落などが引き起こされる危険度が増すことを意味する。
もし金利が急上昇を始めれば、金融機関は一斉を売り、売りたくても売れない状況となる。
市場関係者の多くは、こうした金利急騰などといったことをほとんど予測の範疇外としている。
(マベノミクスは緩やかな金利上昇をもたらし、経済にプラス、という見方ばかりが大手を振っている)
しかし、大手生保やメガ銀行などの一部金融機関は、
既にその危険に備える体制に移行し始めているのである。
(2013年2月4日)
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