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日銀と国債2013/6

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日銀と国債~破綻に向かう異次元緩和

(2013年6月10日)

金融緩和がもたらす金利上昇

日銀の「異次元」金融緩和策が、長期金利の上昇(国債価格の下落)を誘発している。

早くも新金融政策の矛盾が露呈した形だ。

黒田日銀総裁は当初、
長期国債(10年物国債)や20年物などの超長期国債の買い入れを重視してきた。

それは、日銀の国債買い入れによって長期金利を抑え込み、
銀行などの金融機関に「リスク資産へのシフト」や「貸出しの拡大」を促し、
デフレからの脱却(2%のインフレ目標の達成)を行うという筋書きだった。

しかしその思惑は見事に外れ、一時は0.3%台まで低下していた長期金利は
5月23日には1%まで急騰した。

長期国債の「7割」を日銀が買い入れるとういう異常な金融政策の発動により
債券市場の流動性が極端に低下し、国債価格は乱高下を始め、
動揺した投資家が国債を手放す動きが広がったのである。

(例えば、三菱UFJの場合、48兆円もの国債を保有しており
 金利が「0.1%」上昇しただけで、国債価格の下落により「1500億円」の評価益が吹き飛ぶ。)
(国債保有が、銀行にとって「リスク」になり始めた。)

日銀が長期国債を買えば買うほど国債価格が下落する(金利が上がる)という
予期せぬ事態が生じたのである。

さらにこの状況を受けた黒田総裁が5月23日に
「長期金利は、中央銀行が完全にコントロールできるものではない」
という「開き直りの言い訳」とも「評論家的な後付け解釈論」ともとれる発言を記者会見で行い、
事態を鎮静化させるための方針も、市場を安心させるだけの威厳も示せず、
市場の日銀に対する信頼の揺らぎが強まり、日経平均株価の暴落を招くことになった。

景気が上向く中での長期金利上昇であれば、
企業も家計も資金調達コストを吸収し得るし、景気の過熱を防ぐという効果の面もある。

しかし、国債保有にリスクが生じることでの国債価格の下落=長期金利の上昇、は話が全く違う。

景気が上向いてもいないのに、
企業の資金調達コストが上がり、住宅ローンの借入金利が上がるということになり
経済に強烈な悪影響をもたらすのである。

日銀が国債を大量に買い入れる、しかも長期・超長期国債を買い入れるという
まさに「異次元」の金融緩和策が
かえって国債価格を下落させて金利上昇をもたらす、という
「悪い金利上昇」が起り始めているのである。

「矛盾」と「底の浅さ」を露呈した日銀シナリオ

日銀は事態鎮静化のために、小手先の対応策をあれこれ始めた。

とりあえず始めたのが「中期債の買い増し」である。

日銀は「残存期間5年以下」の中期債だけで6兆円以上保有を増加させた。

国債の主要な投資家である銀行が多く保有する中期国債を買い増すことで
銀行の「国債保有リスク」を軽減し、市場の動揺を抑え込もうとしているわけだ。

さらに0.1%の低利資金を金融機関に供給する固定金利オペの期間を
現行の最長1年から2年以上に延長するという案が日銀内で検討されている。

これは固定・低利の資金を銀行に供給することで
国債の買いへ銀行を誘導しようとするものだ。

非常に矛盾した事態になった。

銀行などに「リスク資産への資金シフト」や「貸し出し拡大」へと促すための異次元緩和が
金利上昇という予想外の結果をもたらす事態になり、
今度は銀行に「国債買い」を促す政策の発動に至っているのである。

つまり、
「リスク資産への資金シフト」と「金利抑制」が
大規模な金融緩和(長期・超長期を含む国債の日銀買入拡大)によって可能、というシナリオは
崩れ去ってしまったということになる。

そもそも大量発行が続く国債を、銀行や生保が買い増してきたのは
デフレという状況が続いたからである。

他に有効な投資先がないから国債を大量保有し続けてきた。

そこに日銀が「プレーヤー」として割って入り
国債の大量購入を通じた「金利安」「株高」を強引につくりだそうとしたことから
これまでの微妙なバランスが崩れ、債券市場が不安定化し、金利上昇圧力が強まってしまった。

しかも再度金利上昇局面にさらされたとき日銀には
「中期債買い増し」と「固定金利オペの拡大」くらいしか手持ちのカードがない。

つまり、発動からわずか1ヶ月で、異次元緩和の「底の浅さ」が露呈したということ。

「少なくとも1年以上は続く」などと言われていた「株高・円安のトレンド」は
変化せざるを得ない状況に入ったといえる。

(2013年6月10日)


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