生命保険会社の「格付け」
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日産生命の破たんと保険契約者
1997年4月25日、
大蔵省の「業務停止命令」による日産生命の破たんは国民に大きな衝撃を与えました。
ついに生命保険会社が破たんする時代に入ったのです。
日産生命が発表した3月期決算報告の525億円の最終損失は、
破たん後には、3.5倍の1853億円に上り、
4年以上も決算の粉飾とそれに基づく配当を行ってきたことが判明しました。
原因は、不良債権、逆ザヤ、資産運用の失敗など複合的な要因とされていますが、
問題は、監督官庁である大蔵省(現・金融監督庁)にもあります。
大蔵省は4年前から事態を把握していたにもかかわらず、
国民への公表をせず、適切な指導方針も打ち出さず、
結果として、日産生命の無理な個人年金保険の拡大によって
被害を受ける保険契約者の増大を放置したのです。
破たんのツケは、契約者に回された
日産生命加入者の契約はどうなったのでしょうか?
保険契約そのものは、
生命保険協会が受け皿会社として設立した「あおば生命」に移されたわけですが
(保険契約者保護基金から2000億円の支援金を受けた)
契約内容には以下の措置が取られました。
日産生命からあおば生命に移管された 保険契約に対する措置 |
① 既契約の1年以内の解約は、解約返戻金を15%削減する。 ② 保険料徴収は、これまで通り行う。 ③ 予定利率を、一律2.75%に削減する。 ④ 保険金、年金の支払額を、最大72%減額する。 |
予定利率は引き下げられ、終身保険などは保険金を7割もカットされ、
それがいやで解約するなら、解約返戻金も15%カットする・・・
粉飾決算を続けながら保険勧誘の拡大路線を強行し、
監督官庁も見て見ぬふりを続け、
破たんしたら保険契約者に付けを回す・・・
こんなことが許されるのでしょうか?
通常の株式会社が破たんした場合には、その会社が販売した商品の価値を7割カットする
なんてことはできません。(あたりまえですが)
出資者である「株主」が、出資額の限度において債務を負担するとになります。
ところが生命保険の場合は、
保険という金融商品を購入した「契約者」が、株主と同様
加入金額に応じて損害を負担する義務を負う仕組みとなっているのです。
生命保険は90%が補償されるはずではなかったの?
「生命保険とは、保険会社が破たんした場合、
保険を購入(契約)した契約者が、損害を負担する仕組みの金融商品である。」
私たちはこのことをしっかり認識したうえで保険に入る必要があります。
「約款」にも「ご契約のしおり」にも一切このことは書かれていませんが
実際はこういうしくみで運用されているのが生命保険、ということなのです。
(破たんした東邦生命の場合も、終身保険は最大80%も保険金がカットされました)
「でも、生命保険の場合、90%が補償されるはずでは?」
と思った方もいらっしゃると思います。
これは、「誤解」です。
と言うより、
「保険に安心感を持たせるために、誤解されるような説明表現なされている」
と言ったほうがいいかもしれません。
補償されるのは、
破たん会社が積み立てていた「責任準備金の90%」、です。
「契約した保険金」の補償、と
「責任準備金」の補償、では
意味が全く異なります。
破たんした会社が、本来積み立てるべき責任準備金をほとんど積み立てていなかったら
その90%が補償されたところでまるで意味がないのです。
実際に、現在でも責任準備金を数%とか1%以下とかしか積み立てていない
生保はざらにあります。
大手生保ならちゃんと積立てているかといえば、全くそうは言えません。
(小規模生保でも十分な積み立てを行うように努力している会社もあり、
会社規模の大小は、責任準備金の積立率とは相関していないのです。)
もっと言えば、
「財務が悪化している生保は、責任準備金の積み立てに回す余力がない」
「責任準備金の積立を最優先しないという姿勢そのものが、
その会社の体質を表している」
ということなのです。
生命保険を選びは、「生命保険会社選び」をまず行うべきなのですが、
その際に
「格付け」や「ソルベンシーマージン比率」などよりも
「責任準備金の積立率」とその内容をよく見ておく必要があるのです。
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