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公的年金の資産減少と国債 (2012年4月3日)

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8.8兆円の年金積立金の大規模「取り崩し」

公的年金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)は、
2012年度に8兆8000億円の積立金を取り崩すと発表した。

公的年金が、積立金の拡大(新規運用)から「取り崩し」に転じたのは、2009年。

年金積立金の取り崩しと金融

取り崩し額は、2009年度が約4兆円、
2010年度、2011年度は6兆円強だった。

それが2012年度には8.8兆円と、37%も増加することになる。

この取り崩し急拡大の要因は、
財源不足から基礎年金への国庫負担が見合わされ、
その穴埋めとして2兆5000億円の公布国債をGPIFに引き受けさせるのだが、
消費税の増税が実施されれば公布国債を償還できるという条件が付いているため、現金化できず、
消費増税の実施まで、その分の取り崩し増額が必要になったという事情にある。

つまり、増加分のうち2兆5000億円は、
国家財政逼迫のしわ寄せから生じたものということだが、
問題は、年金積立金の取り崩しが、今後も6兆円規模で続いてゆくことにある。


年金の国債売却がもたらすもの

安定的な国債買い入れを続けてきた公的年金が
積立金の取り崩し構造の中で、「国債売却」勢力に転換する。

2005年末時点で150兆円あった年金積立金は、
2011年末時点では108兆円に減少しており、
今後も5~6兆円のペースで減少(取り崩し)が進行し続ける。

GPIFの国債売却による金融市場への影響額は、
2011年度の1兆円規模から
2012年度は6兆円規模へと一気に膨らむ。

これは債券市場に非常に強いインパクトとなる。

国債のこれまでの主な買い手は、「銀行」「生保」「公的年金」の3大勢力。

しかし、この3つが、同時に「国債の売り方」に転じようとしている。

銀行は、2011年4~12月に、3兆円近く国債を売り越した。

生保も、長期国債の買い控え、売却の動きが始まっている。(⇒生保の国債需要、減退へ

公的年金は、今後毎年5~6兆円規模の国債の売り方に転じる。


金利上昇(国債価格下落)の構造へ

国債をこれまで買い支えてきた年金、銀行、生保が「売り方」に転じる中で、
現在国債を買い支えているのは「日銀」と「海外勢」だ。

日銀は2月14日、積極金融緩和姿勢(インフレ目標)を明確にし
国債買い入れ枠を年10兆円拡大。
(国債の月間買い入れ額は従来の3倍になる)

しかし、膨らみ続ける国債発行と国債売り圧力に対して
日銀が無限に買い支えることはできない。
(日銀の国債購入の肥大化は、その歪みを市場に見抜かれ、市場の力で清算される)

海外勢は、年間10兆円規模で国債を買い越しているが、
状況が転換すれば一気に売りに転じる不安定化要因にすぎない。

さらに、国債発行残高は今後、
今まで以上に急膨張して行く構造が生じる。

「高金利時代の国債」を低い利回りで借換債を発行することで
国債残高が膨張しているにもかかわらず「利払い費」は逆に「減少する」という
「金利ボーナス現象」が2012年度から消滅し、
利払い費急増⇒買換え債の大量発行、が必要となるのだ。 (⇒国債「金利ボーナス」の消滅

「国債バブル」を生んだ構造(国債が超安全資産とされていた時代)は、
ついに逆回転の時を迎えようとしている。

国債をめぐる構図の二重三重の転換が2012年に集中し、
今年以降は、
金利急騰(国債暴落)がいつ始まってもおかしくない状況が出来上がることになる。

公的年金・積立金の「取り崩し」⇒年5~6兆円の国債売却は、
その重要なファクターということだ。

(2012年4月3日)


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