円安値上げが始まる
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円安値上げが始まる
(2013年2月27日)
円安による値上げが始まろうとしている。
電気料金やガソリン、灯油などの燃料費、鉄鋼、石油化学、繊維などの素材産業、
小麦、ティッシュペーパーなどの食品、日用品などが
円安による輸入価格の上昇で4月頃から軒並み値上げになって行く。
主な値上げ品目と値上率 | |||||
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品目 | 主な用途 | 値上げ表明 | 値上げ率 | 実施時期 | |
穀物 | 輸入小麦 | 小麦粉など | 農水省 | 9.7% | 4月 |
家庭紙 | - | ティッシュペーパー トイレットペーパー | 日本製紙クレシアなど | 15%以上 | 4月出荷分 |
合成繊維 | - | ポリエステル繊維 ナイロン繊維 | 東レ | 10% | 3月出荷分 |
鋼材 | H型鋼、棒鋼 | 鉄骨、鉄筋 | 東京製鉄 | 4~5% | 3月 |
薄鋼板 | 建材、家電 | 新日鉄住金など | 12~20% | 4月出荷分 | |
石油化学 | ポリエチレン | レジ袋 | 日本ポリエチレン | 6%程度 | 3月下旬 |
ポリプロピレン | 食品包装 | 日本ポリプロ | 6%程度 | 3月下旬 |
小麦
農林水産省は、4月1日から輸入小麦の製粉会社などへの引渡し価格を平均9.7%引き上げる。
小麦は252%の関税がかけられるが
まず国が関税なしで輸入し、その輸入価格に一定額を上乗せして製粉会社に売り渡す仕組み。
(4月と10月に売り渡し価格が見直される)
小麦の国際価格上昇と円安が値上げの理由。
電気料金・ガス料金・ガソリン
円安の影響で液化天然ガス(JNG)、原油、石炭が軒並み上昇し、
電気料金、都市ガス料金が一斉値上げとなる。
(国の認可により4月から値上げ予定)
レギュラーガソリンの店頭価格(全国平均)は1ℓ=156.2円(2月27日)となり、
12週連続で値上がりしている。
合成繊維、レジ袋
円安の影響でナフサ(粗製ガソリン)の取引価格が上昇し、
ナフサを原料とする合成繊維や石油化学製品が値上げされる。
東レは3月出荷分からポリエステル繊維やナイロン繊維国内卸価格を10%引き上げ、
ポリ袋や容器に使うポリエチレン樹脂は、日本ポリエチレンが6%値上げする。(3月下旬から)
建材用の薄鋼板
新日鉄住金は4月出荷分から建材用の薄鋼板を12~18%値上げする。
「円安により原料の大幅上昇は避けられない」として5月以降の値上げも検討している。
ウォン高で韓国鉄鋼大手のポスコが日本向け鋼板価格を値上げしたのも大きく響く。
円安による物価上昇がもたらすもの
安倍政権は脱デフレを金融緩和で実現すること指向しているが
実体経済主導のデフレ脱却には「所得増と消費回復」が不可欠。
では、金融緩和⇒円安⇒輸入物価の値上がり、は何をもたらすだろう?
既に日本は、製造過程を海外生産に移してしまっており、貿易赤字が常態化しつつある国だ。
つまり、円安による輸出企業への恩恵は限定的で、
むしろ輸入物価の値上がりで貿易赤字を拡大し、経常赤字国への転落を早めることになる。
(1月の貿易赤字は、過去最大である1兆6294億円にまで膨れ上がった)
(経常収支も現在、2か月連続の赤字だ)
経常赤字とは、国内の富が海外に流出して行くという状態であり、
円安は、貿易赤字拡大⇒経常赤字国へ、という流れを加速させ、国富を減少させるものとなる。
(消費と所得の減退をもたらす。)
史上類例のない日銀の金融緩和は、
投機マネーを膨張させて株高を当面の期間は継続させはするが、
金融緩和がもたらす通貨安は、すべての国にとってプラス作用をもたらすわけではない。
既に輸出国ではない、貿易赤字国の日本の現状における円安は、
実体経済にはマイナス作用を及ぼすことを、マスコミも、多くの評論家も、あまりに軽視している。
(2013年2月27日)
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