経済危機/日本と世界

岐路にさしかかる住宅ローン2

岐路にさしかかる住宅ローン 2 (2012年4月2日)

住宅ローンをめぐる銀行間の低金利競争は、
「採算悪化」と「不良債権化」をもたらしつつある。

とくに住宅ローンの「不良債権化」は
今後大きな問題となる可能性が高い。

銀行の、住宅ローンに対する「貸倒れ引当率」は
「融資残高の0.1~0.2%程度」(三菱総合研究所)という水準。

しかし、実際には毎年度2~3%の貸し倒れが発生している。

住宅ローンの貸倒れは、
3年目に初年度の3倍に、10年目に6倍に膨らむ、という特徴を持つ。

数が膨大な住宅ローンは、企業向けのように個別の回収可能性を査定せず、
一定の計算式によって貸倒率を推定し、引当金を積む。

リスクを3年先までしか読まななければ貸倒率は低く予測され
引当金の積み立ては、本当の必要額を下回る水準でよしとされる。

住宅ローン金利の推移(日銀データ)

日銀は、3月30日、
銀行の住宅ローンのリスク管理に甘さがあると見て
2012年度から考査を厳格にする、と発表。

金融庁も昨年秋から厳格検査に乗り出している。

10年に及ぶ住宅ローン低金利時代は終焉を迎えつつあり、
銀行の対応も二極化して行きそうだ。


「撤退する銀行」と「さらなる低金利商品で勝負する銀行」

住宅ローンの融資を拡大し続けてきた銀行の一部に
撤退の動きが出てきた。

2012年1月、インターネット専業の住信SBIネット銀行は
ネット経由での住宅ローン受付を中止すると発表した。

今後は、親会社である三井住友信託銀行に取り次ぐ代理業に転じることになる。

住信SBIネット銀行は、貸出債権の9割を住宅ローンが占める構造となっており
あまりにリスクが高いと判断したもようだ。

また、新潟県の塩沢信用組合は、
1月から住宅ローンの新規営業を中止し、実質的に撤退した。

このように低金利競争の激化の中での「採算悪化」「リスク拡大」から撤退の動きが出る一方、
大手銀行はさらに強気の姿勢を取っている。

三菱東京UFJ銀行は、
固定金利の商品で、当初10年間の最低金利を業界最低の1.45%に引き下げ、
ローン利用者に求めていた自己資金も不要にした。

三井住友信託銀行は、
変動金利で0.775%の最優遇金利を出し、
2015年度末に住宅ローンの貸出残高を現在の7割増の10兆円に引き上げる計画を決めた。
(住宅ローン営業担当者を35%増員する)


金利上昇に向かう世界情勢と住宅ローンのリスク

低金利という「甘い罠」にさそわれて
個人も国も極限まで負債を膨らませつつある。

膨れ上がる負債に対して、FRB、ECB、日銀などの中央銀行は
史上空前の金融緩和で、なんんとか負債の発散=金利高騰を抑え込もうとしているが
これがさらなる負債の増大をもたらしている。

いずれ、莫大な負債の山が、
中央銀行にも制御不能という事態に到達してしまった現実を突き付ける時が来る。

日銀が、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が、FRB(米連邦準備制度理事会)が、
国債をどれだけ買おうが、資金のばらまきをどれだけ広げようが、
市場金利の高騰が止まらない時代。

私たちは、金融の大転換がもはや眼前にあることを直視しなければならない。

住宅ローンをめぐる小さな変化に潜む予兆を「見据えるか」「見逃すか」で
今後、自身が置かれる状況が決まる。


(2012年4月2日)



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