岐路にさしかかる住宅ローン
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岐路にさしかかる住宅ローン (2012年4月2日)
「銀行の住宅ローン残高」は、2011年末時点で105兆円を超えた。
住宅ローンは、銀行融資の4分の1を占めるまでに膨らんできている。
これまで景気停滞下での「安全資産」とされてきた住宅ローンをめぐって
銀行は、低金利競争を激化させ、積極的な貸し出し姿勢を強めてきた。
しかしここにきて若干様相が変わってきた。
あまりに激しい低金利競争の中で採算が悪化し始め、
住宅ローンの不良債権化を心配する声も出始めている。
銀行のシェア拡大と「採算悪化」
住宅ローン市場自体は、2002年3月末の191兆円から
2011年3月末の180円へ、約6%縮小している。
その中で、「銀行の」住宅ローン融資は、
76兆円(2002年3月末)⇒105兆円(3011年3月末)へと37%も拡大している。
これは、銀行が低金利競争を激化させる中で
住宅金融公庫(住宅金融支援機構)の住宅ローンシェアを奪ってきためだ。
この10年足らずで、銀行のシェアは4割⇒6割に拡大し、
これまで4割で銀行と拮抗していた住宅公庫は
4割⇒15%(住宅金融支援機構)へと急減している。
ただし、こうしたシェア拡大の一方で
低金利がもらたす「採算悪化」が問題化し始めている。
店頭金利からコストと優遇幅を引いた「利ザヤ」は
大手行で0.1%まで低下しており、
「これ以上の低金利競争にはついて行けない」と言った声も聞こえ始めている。
住宅ローンの「不良債権化」懸念
「採算悪化」と同時に問題となりつつあるのが
住宅ローンの「不良債権化」だ。
ほとんどの大手行は、「住宅ローンの不良債権比率は1%未満で、問題はない」としているが
銀行は、住宅ローンの不良債権額と貸出に対する比率を公表しておらず、
額面通りに受け取ることはできない。
住宅金融支援機構は、自らの不良債権比率を公表しているが、
これを見ると、2011年3月末時点での機構の「不良債権比率」は、8.48%。
10年間で4.7倍にまで広がっている。
この水準は、
かつてメガバンクが大口融資先の不要債権問題で窮地に陥った時とほぼ同じだ。
銀行の住宅ローンは、
「水面下で不良債権化が広がっている」または「今後急速に広がる可能性がある」
と見るのが妥当だろう。
さらに銀行はこの間、
「変動金利」、
3年、5年などの「短期・中期固定金利」
といったタイプの住宅ローン商品を拡大し続けてきた。
世界の金融を巡る状況は転換期を迎えており
低金利時代は終焉を迎え、今後は金利高騰の局面に入って行くだろう。
住宅ローンの貸し倒れリスクはこれから高まって行く、と言わざるを得ない。
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