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中東2013/4

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中東、開発投資と失業 

(2013年5月1日)


《ポイント》

  • 中東諸国で、鉄道網整備などのインフラ開発計画が急拡大している。
  • その背景には、人口増に伴う若年層の失業などの社会問題がある。



サウジアラビア、カタールなどの中東諸国で大規模なインフラ投資が進められている。

中東諸国のインフラ投資計画
サウジアラビア・50万戸の住宅建設
・地下鉄の新設(リヤド、ジッダ)
・原子力発電所の新設(16基)
UAE・主要都市間の鉄道網整備
・地下鉄の新設(アブダビ)
・再生可能エネルギー開発(マスダール計画)
カタール・地下鉄の新設(ドーハ)
エジプト・カイロの地下鉄延伸
・カイロ-アレクサンドリア間、鉄道高速化
・交通システム近代化(渋滞緩和)

サウジアラビアでは、
アブドラ国王が財務省に住宅建設の財源2500億リヤル(約6兆5千億円)の支出を命じた。

サウジの人口は年2%以上もの増加が続き、若年層向けの物件が不足し、賃料が高騰しているためだ。

また、自動車を保有できない中低所得層に移動手段を的供する目的で、
首都リヤドやジッダで地下鉄の新設が計画されている。

こうした大規模投資の元手は石油収入。

サウジアラビア政府は2030年までに16基の原発を建設する計画も発表し、
石油を国内消費に極力使わず、輸出に廻す意向を打ち出した。

カタールは2022年のサッカー・ワールドカップに備え、首都ドーハでの地下鉄の新設を計画している。

UAEは、主要都市をつなぐ鉄道網整備や地下鉄建設を計画しており、
環境都市を推進する「マスダール計画」や職業訓練に力を入れるなど
新産業育成、雇用対策強化に動いている。

背景にある若年層の失業問題

このように中東諸国が国内投資に力を入れ、雇用対策を進めようとしている背景には
人口急増に伴う若年層の増加、失業問題がある。

サウジアラビアは2%強の人口増が続いており、50年後には人口が1.7倍になる。

労働力の多くを外国人(人口の3割が外国人)に依存している現状があり、
サウジ人に限った失業率では12%を超え、若年層の失業率は3割前後と見られている。

政府はサウジ人の雇用比率を定める雇用策を導入(2011年~)し、
外国人労働者の取締強化、インド人、イエメン人の国外退去などが問題となっている。

カタールの人口増加率は2.9%(国連推計2010~2015年)、UAEも同2.2%と、
サウジアラビアと同様の構造・問題を抱える。

国際通貨基金(IMF)の経済見通しでは
中東・北アフリカの経済成長率は4%台後半だが、
エジプトの失業率が12.2%など悪化し続けており、
経済成長ほどの生活改善の実感がなく、若年層の不満は増大しつつある。

2011年のエジプト政変の背景には、増加する若年層の不満が背景にあった。

中東諸国の政府が社会環境の改善に動き出している背景には、
政情不安定化につながりかねない失業問題などの社会構造がある。

(2013年5月1日)


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