経済危機/日本と世界

中国/鉄鋼2013/6

金融危機 経済破綻 世界・日本 > ニュース > 国際ニュース > 中国の人件費、アジアの人件費

中国 鉄鋼業の増産と価格下落 

(2013年6月7日)

中国地方政府と鉄鋼メーカーの一体化

中国の鉄鋼業の膨張が、世界に鉄鋼価格下落の波を広げている。

中国の粗鋼生産量は、世界生産量の半分近くを占めており、
年間生産能力は9億トンに達する。

そのうち2億トン分が過剰生産能力であり、その規模は世界の鉄鋼重要の1割に達する。

しかし、中国の鉄鋼メーカーは生産量を落とすどころかさらに増産を続けている。

収益が赤字になっても、である。

なぜか。

中国の鉄鋼メーカーと中国の地方政府との密接な関係がその背景にある。

地方政府と地元金融機関、鉄鋼メーカーは一体の関係にあり、
たとえ業績が悪くても地元金融機関が運転資金を融資し続ける。

実際に、中国の鉄鋼メーカーの業績は悪化している。

2012年の鉄鋼主要80社の税引き前利益は、前年比98%減となり、
23社が赤字に陥り、赤字合計額は290億元に達している。
(実際の赤字額はもっと大きいと考えられる)

けれども地元の雇用の大半が鉄鋼メーカーに支えられている地方政府は
赤字であっても増産し続けることをメーカーに要請し、
地元金融機関はそのために資金供給を続ける。

それだけではない。

中国はさらに粗鋼生産量を増やそうとしている。

2015年に稼働が開始される中国南部の2つの製鉄所は
年間生産量が合計で2000万トンにも達する。

中国の過剰供給が鉄鋼価格の下落をもたらし、今後さらに状況は悪化する構造。

保護主義がアジアを中心に世界に広がりかねない状況だ。

鉄鋼価格下落と保護主義

安価な中国製の鋼材が大量供給され続けることで、価格は下落し、
世界中の鉄鋼メーカーが収益を悪化させている。

鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルは中国製品の低価格攻勢を受け、昨年末に赤字に転落。

ミタルの最高責任者(CEO)ラクシュ氏は
「欧州連合は、中国からの輸入品の関税を引き上げるべきだ」
と声高に主張し始めた。

タイは2月に、
熱延鋼板を対象に中国製品に対するセーフガード(緊急輸入制限)を発動した。

タイの鉄鋼メーカー4社が、安価な中国製品により深刻な損失を被っていると訴えたためだ。

ベトナムでは4月に中国からの鉄鋼製品輸入が2.3倍になり、
来年6月にも中国製品を締め出すために鉄鋼製品の品質基準を導入する。

こうした流れは今後さらに広がりそうだ。

地元メーカーを守り、地元の雇用を守りたいという発想は
世界経済が減速する中で世界共通のものだからだ。

そしてこの構図は鉄鋼業に限られたものではない。

石油化学、アルミ、化学繊維など様々な業種で
中国の生産能力の膨張と価格下落、そして世界経済減速が進行している。

貿易と市場のグローバル化(自由化)ではなく、
「保護主義」が大きな流れになる可能性が高まっている。

(2013年6月7日)


関連ページ

 
国際金融ニュース一覧 / ☆国内金融ニュース一覧

金融入門 / 外為市場

金融危機 経済破綻 世界・日本《HOME》

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional